大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和63年(ワ)8805号 判決 1991年1月31日

甲事件原告 竹田実

乙事件原告 大野崇司

<外一三名>

右甲、乙事件原告ら訴訟代理人弁護士 小寺史郎

同 福本康孝

甲事件、乙事件被告 株式会社シンコー

右代表者代表取締役 熊取谷茂

右訴訟代理人弁護士 長野義孝

同 平井慶一

同 山内良治

同 松尾園子

同 山西美明

主文

一、原告らの請求をいずれも棄却する。

二、訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一、当事者の求める裁判

(甲事件)

一、原告

1. 被告は原告に対し、六甲カントリー倶楽部の全会員の氏名および住所について会員名簿を発行するなどの方法をもって明らかにせよ。

2. 被告は、六甲カントリー倶楽部の理事会ならびにルールズ・エチケット・ハンディキャップ・グリーン・キャディ・ハウス・フェローシップ・交通・コンペティションその他必要と認める委員会を設置する義務のあることを確認する。

3. 被告は、六甲カントリー倶楽部の会員である原告についてハンディキャップの公認をなし、かつ、これを六甲カントリー倶楽部の建物内(西宮市山口町金仙寺釜ヶ尾一六五五-一)に提示する義務のあることを確認する。

4. 被告は、六甲カントリー倶楽部において、すくなくとも毎月一回会員の参加するコンペティションを開催する義務のあることを確認する。

5. 訴訟費用は被告の負担とする。

二、被告

1. 原告の請求を棄却する。

2. 訴訟費用は原告の負担とする。

(乙事件)

一、原告ら

甲事件原告の請求に同じ

二、被告

1. 原告らの請求をいずれも棄却する。

2. 訴訟費用は原告らの負担とする。

第二、当事者の主張

(甲事件)

一、原告の請求原因

1. 被告は、西宮市山口町金仙寺釜ヶ尾一六五五-一において、六甲カントリー倶楽部なる名称のゴルフクラブを経営する株式会社である。

2.(一) 原告は、昭和五七年七月五日、六甲カントリー倶楽部の個人正会員となった。

(二) 原告が六甲カントリー倶楽部の個人正会員となるに際しては、六甲カントリー倶楽部の会則を承認して入会しているところ、六甲カントリー倶楽部は預託金会員制ゴルフクラブであって、権利義務の主体となりうる独立の法的地位をもたず、いわば任意団体として権利主体たるゴルフ場経営会社の所有経営するゴルフ場の運営管理の面についてのみ諸活動をしているものであるから、原告が六甲カントリー倶楽部の個人正会員となったことによって、六甲カントリー倶楽部の会則(以下「本件会則」という。)は、原告と被告との間の契約上の権利義務の内容を構成するに至った。

3. (会員名簿について)

(一) 預託金会員制ゴルフクラブの会員権の主たる内容は、会員はビジターに優先してプレーをすることができ、(プレー権)、かつ、ビジターより廉価でプレーできることをその内容とする優先的施設利用権にあるところ、プレー権がどの程度確保されているかということは会員にとって最大関心事である。ゴルフ場施設の運営者としては、会員に対してどの程度プレーする機会を提供できるかを明確にさせる義務がある。

(二) また、会員制ゴルフ場は会員間の親睦を目的とするものであり、本件会則においても、このことは明記している。そして、どんな人が会員なのか、どれ位の人がいるかを各会員が知らないと親睦を図り、クラブライフを楽しむことは困難である。

(三) したがって、ゴルフ場施設の運営者としては、そのゴルフ場がどの程度のプレー機会の提供が可能なゴルフ場なのかを知らせるとともに会員間の親睦に供するため、会則にその旨の定めがあるとないとにかかわらず全会員の氏名および住所について会員名簿を発行するなどの方法をもって明らかにすべき義務を負っているのであり、会員にはそれを請求する権利がある。

4. (理事会およびその他の委員会について)

(一) 本件会則の六条、一一条、一四条、一五条ないし一七条、一九条ないし二一条、二五条は、いずれも被告において理事会を設置し、かつ理事会が存在していることを前提とする規定である。

(二) また、本件会則二一条は、「理事会は、ルールズ・エチケット・ハンディキャップ・グリーン・キャディ・ハウス・フェローシップ・交通・コンペティションその他必要と認める委員会を運営する。」と定めている。

(三) したがって、被告は、右会則により、理事会および右(二)項に掲記の各委員会を設置することを義務付けられている。

(四) なお、本件会則は、会員権は理事会の承認を得て譲渡することができると定めているのであり、これからしても理事会の存在は必須であることになる。

5. (ハンディキャップの公認およびその掲示、コンペティションについて)

(一)本件会則は会員相互間の親睦を目的とする旨の定めを置いているが(二条)、その目的を達成するためには、まず、全会員においてハンディキャップを公認し、かつ、これをクラブハウス内に公示し、会員の参加するコンペティションを少なくとも毎月一回開催する(月例会、マンスリー)ことが肝要である。

(二) それゆえ、被告は、六甲カントリー倶楽部(社員)縁故募集会員募集要項には、「他クラブへ一ヶ所以上所属し、かつ認定ハンディキャップ二八まで」と入会資格を制限し、また本件会則二一条においては前記のとおりハンディキャップおよびコンペティションの各委員会の設置を定め、その存在を前提としているのである。

(三) したがって、被告は会員全部についてハンディキャップを定め、コンペティションを少なくとも一ヶ月に一回位開催することを義務付けられており、会員は被告に対して、これを要求することができる。

6. しかるに、被告は、会員名簿を発行しない。また、六甲カントリー倶楽部には、理事会も各種委員会も存在しない。さらに、ハンディキャップの公認およびその掲示もしないし、コンペティションも開催しない。

7. よって、原告は被告に対して、六甲カントリー倶楽部の全会員の氏名および住所について会員名簿を発行するなどの方法をもって明らかにすべきことおよび、原告と被告との間において、被告が前記理事会その他の委員会を設置すべき義務、ハンディキャップを公認し、これをクラブハウス内に掲示すべき義務および六甲カントリー倶楽部において少なくとも毎月一回会員の参加するコンペティションを開催する義務のあることの各確認を求める。

二、原告の請求原因に対する被告の認否

1. 原告の請求原因1は認める。

2. 同2のうち、原告が六甲カントリー倶楽部の会員であること、本件会則の存在は認める。その余は争う。

3. 同3ないし6はすべて争う。

三、被告の主張

1. 被告と会員との間の入会契約の本質的部分は、本件会則のうち、被告と会員との間を直接規律する、(1) 入会金および預託金支払義務、(2) 会員の被告に対する会費等の納入義務、(3) 会員の被告に対する預託金返還請求権、(4)、会員の被告に対する施設の優先的利用請求権に関する条項であり、その余の会員の任意団体である六甲カントリー倶楽部に関する条項は、被告と会員との間を直接規律するものではないから、相互に拘束力はないと解すべきである。

したがって、これに拘束力があることを前提とする原告の主張は失当である。

なお、本件会則中、理事会に関する条項は、本来は社団法人制ゴルフクラブを前提にした条項である。

2. 本件会則には、会員の任意団体である六甲カントリー倶楽部に理事会を設け、同理事会に競技会の開催等の運営を担当させる旨の条項が存在するが、右のような本件施設の運営主体、運営方法等の運営に関する事柄は、最終的には本件施設を所有、経営している被告の裁量、権限に属する事柄である。そして、被告としては、会員の任意団体である六甲カントリー倶楽部に理事会を置いてこれに運営を担当させるよりも、被告において責任をもって直接運営する方が、最良の運営が図られ、会員の利益になるものと判断して、被告は六甲カントリー倶楽部のゴルフ場施設開場以来これを運営しているのである。

3. また、昭和六二年一〇月には、被告の代表取締役を委員長、会員一五名を委員とする「六甲カントリー倶楽部委員会」が発足し、被告は、運営上の重要な事項については、同委員会の決定を経たうえ実施することとし、同委員会は、昭和六三年には、三月一八日と九月二〇日に開催された。

会員名簿については、オープン前の昭和五九年一月ころに一度発行し、当時の会員に配付したことがあったが、同名簿が名簿業者に利用され迷惑を被ったとの申出があったりしたため、その後は発行しないこととしたものであり、ハンディキャップの公認については、ハンディキャップを公認した場合、会員相互間に過度の競争意識が生じ、プレーの楽しさを阻害することになりかねないので、公認をしていないものである。

四、被告の主張に対する原告の認否

被告の主張はすべて争う。

(乙事件)

一、原告らの請求原因

1. 原告らは、いずれも六甲カントリー倶楽部の個人正会員であり、個人正会員となるに際しては、六甲カントリー倶楽部の会則を承認して入会しているものであり、甲事件原告におけるのと同様に本件会則は、原告らと被告との間の契約上の権利義務の内容を構成するに至った。

2. その余の原告らの請求原因は甲事件原告の請求原因1、3ないし6に同じ。

3. よって、原告らは被告に対して、六甲カントリー倶楽部の全会員の氏名および住所について会員名簿を発行するなどの方法をもって明らかにすべきことおよび、原告らと被告との間において、被告が前記理事会その他の委員会を設置すべき義務、ハンディキャップを公認し、これをクラブハウス内に掲示すべき義務および六甲カントリー倶楽部において少なくとも毎月一回会員の参加するコンペティションを開催する義務のあることの各確認を求める。

二、原告らの請求原因に対する被告の認否

1. 原告らの請求原因1のうち、原告らが六甲カントリー倶楽部の個人正会員であることは認める。その余は争う。

2. その余の原告らの請求原因はすべて争う。

三、被告の主張

甲事件の被告の主張と同じ

四、被告の主張に対する原告らの認否

被告の主張はすべて争う。

第三、証拠関係<省略>

理由

(甲事件について)

一、原告の請求原因1(被告が六甲カントリー倶楽部を経営する株式会社であること)、同2のうちの、原告が六甲カントリー倶楽部の個人正会員であること、および、六甲カントリー倶楽部には会則が定められていること(本件会則)は当事者間に争いがない。

二、まず、原告主張の会員名簿についてみる。

原告は、会則に規定があるのとないのとにかかわらず、被告には、① 預託金会員制ゴルフクラブの会員の優先的施設利用権の確保および② 会員間の親睦の前提として会員名簿その他会員の氏名および住所について会員名簿を発行するなどの方法をもって明らかにすべき義務を負う旨主張するが、この見解は採用し難い。

前記のとおり、被告が六甲カントリー倶楽部を経営する株式会社であることは当事者間に争いがなく、成立について争いのない甲第四ないし第六号証、甲第一七ないし第二〇号証に弁論の全趣旨によれば、六甲カントリー倶楽部は被告をゴルフ場施設の運営者、所有者とするいわゆる預託金会員制のゴルフクラブ(すなわち、おおまかにいえば会員が金員を預けること〔預託金〕を条件として、当該の会員にゴルフ場施設を優先的に利用させる権利を保証する形態のゴルフクラブ)であることが明らかである。

そして、会員制ゴルフクラブの場合、会員数に応じて、その優先権の価値が異なってくることは理の当然であるから(会員が多ければ、極端な場合は会員制をとっていないのと殆ど変わらなくなるし、会員が少なければ、殆ど随時に利用可能となる。)、会員の氏名および住所が明らかであれば、当該ゴルフ場の会員数が明らかになり、自己がどの程度の優先権を確保しているか判明するし、併せて会員相互の親睦に資することになるであろうことはこれを理解することができないではない。

しかし、だからといって、ゴルフ場施設運営者、所有者が負担する会員に優先的利用をさせる義務に会員数を明らかにする義務が当然に含まれるというのは、論理に飛躍があるといわざるを得ない。

預託金会員制ゴルフクラブのほかにも会員になんらかの優先権を与える形態の営業が多数存することは公知の事実である(例えば、テニスクラブ、スイミングクラブその他のスポーツクラブやバー・スナック等のサービス業、いわゆる会員権方式の別荘等、枚挙に暇がないほどである。)ところ、それらすべてが会員数を明らかにする方策を明確に講じているものばかりではないことも公知の事実であるから、会員制ということと会員数を明確にすることとの間に一般的にはそれほど強固な結合はないものとみるほうが実体に合致していると考えざるを得ない。また、会員数を明らかにすることをしなくても、一定の優先的利用回数を保証するとか、利用券を発行する等の手段を講じれば、優先的利用権の確保という観点からすれば問題はない。もし、そのような手段を講じていないのであれば、それはその程度の優先的利用権であると理解するしかないといえる。仮に、ゴルフ場施設所有者が会員数を限定している旨広告し会員を募集している場合であってもこの理は変わるところはない。なるほど、会員数を限定すると広告しながら、それ以上の会員を募集した場合には、入会契約上は詐欺に該当することとなる可能性があるが(したがって、施設の能力を大幅に超え、それではもはや会員制ということができないほど多数の会員を募集する場合も同様に詐欺に該当する可能性がある。)、だからといって、当然に会員数を明確にする義務が生ずるといえないこというまでもない。

次に会員相互の親睦の点についてであるが、一般に、預託金会員制のゴルフクラブにおいては、① ゴルフ場施設の所有者、運営者とは別に一般にゴルフクラブなる団体が存在することが多いこと、② 右ゴルフクラブが存在する場合には、当該ゴルフクラブに加入することによっていわゆるゴルフ会員権を取得し、その会員となることによって、ゴルフ場施設の優先的利用権やその他の特典を取得するものであって、右の特典を享受するためにはゴルフクラブの会員であることが資格要件となっていること、③ 右ゴルフクラブには種々の形態のものがあり得るのではあるが、多くはゴルフ場施設の所有者、運営者が当該ゴルフクラブを設立し、その運営もゴルフ場施設の所有者、運営者が事実上行っており、ゴルフクラブに団体としての実体のない場合が多いこと、以上の各事実はいずれも公知の事実である。

したがって、右のような、設立、運営のすべてを事実上ゴルフ場施設の所有者、運営者が行い、ゴルフクラブに団体としての実体がないような場合は、形式的にはゴルフクラブの会則はゴルフクラブ内部において当該ゴルフクラブの内部を規律する規範として制定されるものではあるが、その実質においてはゴルフ場施設の所有者、運営者と当該ゴルフ場について優先的利用権やその他の特典を取得しようとする者との間の規範として制定されているといって差し支えないのである。そして、前記のところおよび弁論の全趣旨により、六甲カントリー倶楽部も団体としての実体のないゴルフクラブであると認めるのが相当であるから、本件会則も、被告と六甲カントリー倶楽部の会員との間の規範として制定されたものとみるのが相当である。

しかし、一方、ゴルフクラブの会則の中にはゴルフクラブの会則をゴルフ場施設の所有者、運営者と当該ゴルフ場について優先的利用権やその他の特典を取得しようとする者との間の規範であるとみた場合に、意味をなさない会則が存在する場合があることも、それが形式的にはゴルフクラブというゴルフ場施設の所有者、運営者とは無関係な団体の会則として規定されているところから容易に理解されるところである。

この観点からみた場合には、なるほど、弁論の全趣旨により、本件会則中には、六甲カントリー倶楽部は会員相互の親睦を目的とする旨の規定がされているのであるが、これが、ゴルフ場施設の所有者、運営者と当該ゴルフ場について優先的利用権やその他の特典を取得しようとする者との間の規範として意味を有しないものであることは明らかである。したがって、この規定を根拠として、被告になんらかの法的な義務が発生すると解することは困難である。しかも、右の規定自身その文言上も単なるゴルフクラブ設立の目的を宣明したものにすぎないのであって、本件会則全体を通覧してもこの規定がなんらかの具体的な権利義務を与える趣旨とみることはできない。したがって、これからしても、被告に会員数を明確にする法律上の義務があるとはいえない。

してみれば、これを前提とする原告の請求は理由がない。

三、次に、理事会およびその他の委員会の設置について考えるに、前記のとおり、設立、運営のすべてを事実上ゴルフ場施設の所有者、運営者が行い、ゴルフクラブに団体としての実体がないような場合は、実体のあるゴルフクラブにおいて当然に必要とされる理事会およびその他の委員会が、その実質において必要とされないものであることはいうまでもない。なんとなれば、理事会およびその他の委員会は、その性格上、ゴルフクラブ内部における意思決定上必要となる機関であるから、団体としての実体がなく団体として意思決定をすることがあり得ないゴルフクラブにあっては、それらの機関が必要でないこと明らかであるからである。したがって、前記のとおり、形式的にはゴルフクラブの会則はゴルフクラブ内部において当該ゴルフクラブの内部を規律する規範として制定されるものではあるが、その実質においてはゴルフ場施設の所有者、運営者と当該ゴルフ場について優先的利用権やその他の特典を取得しようとする者との間の規範として制定されているものであることからすれば、本来のゴルフクラブにおいて理事会およびその他の委員会が意思決定したことについて会員がなんらかの拘束を受けるような事項が仮に存在するとすれば、それは、ゴルフ場施設運営者において意思決定する事柄なのである。

したがって、ゴルフクラブの会員がそのゴルフクラブ会則に基づいてゴルフ場施設の利用について要求し得る事項は、これをゴルフ場施設の所有者、運営者に対して要求することができるものと解されるが、それだからといって、単に形式的な理事会およびその他の委員会の設置をゴルフ場施設の所有者、運営者に対して請求する法律上の権利を認める必要はなく(直接にゴルフ場施設の所有者、運営者に対して請求すれば足りる。)、本件会則にそのような理事会およびその他の委員会が設置されることを前提とする条項があるとしても、そのような条項に拘束力を認めることはできない(なお、このように実体のないゴルフクラブであることを知らずに入会した会員については、場合によっては契約の要素に錯誤あるものとして入会契約が無効となる余地はある。)。

成立について争いのない甲第三八号証(今中利昭作成の意見書)中には、ゴルフ会員権に基づいてゴルフ場施設の利用につき要求し得る事項について理事会、その他の委員会の存在が必要な場合には、その設置を請求できる旨の記載があるが、右のとおりこの見解は採用し難い。

したがって、これを前提とする原告の請求は失当である。

四、ハンディキャップの公認およびその掲示、コンペティションについて考えるに、会則中にハンディキャップを公認し、それを掲示することやコンペティションを定期に開催する等をゴルフクラブがなすことを明示する規定が存する場合には、これは、右に説示したところよりして、ゴルフ場施設の所有者、運営者と当該ゴルフ場について優先的利用権やその他の特典を取得しようとする者との間の規範として意味を有するものということができる。そこで、これについてみるに、本件会則中にこのような点について具体的に定めた規定が存しないことは弁論の全趣旨により明らかである。原告は、本件会則二一条においてハンディキャップおよびコンペティションの各委員会の設置を定めていることを指摘するが、右各委員会についての定めを会則中においているからといって、直ちに、ハンディキャップを公認し、それを掲示することやコンペティションを定期に開催する等を具体的に規定したものということはできないから、これをもって、ゴルフ場施設の所有者、運営者にそれらをなすことを義務付けたものとみることはできない。

なお、前掲甲第三八号証中には、会員の公式ハンディキャップ取得は原則として預託金制ゴルフクラブの会員権に内在する権利であるかのごとき記載があるが、同号証によれば、公式ハンディキャップを認定するためには、JGA(財団法人日本ゴルフ協会)に加入する等の手続が必要であるというのであるから、このような特別の手続が必要なものが、ゴルフ会員権一般に内在する権利ということができるはずがない。

また、原告らは、六甲カントリー倶楽部(社員)縁故募集会員募集要項に、「他クラブへ一ヶ所以上所属し、かつ認定ハンディキャップ二八まで」と入会資格を制限していることを根拠として主張するが、この募集要項は単なる入会資格に関するものであるから、入会後の権利義務関係の問題である本件とは関係がない。

したがって、ハンディキャップの認定・掲示、月例コンペティションの開催をすることが、ゴルフクラブとして望ましいことであるとしても、直ちに会員に法律上の権利として認めることはできないから、この点に関する原告の主張も失当である。

五、よって、結局のところ、甲事件について原告の請求はすべて理由がないに帰着する。

(乙事件について)

原告らの請求原因1のうち、原告らが六甲カントリー倶楽部の個人正会員であることは当事者間に争いがないが、原告らの主張する各請求が認められないことは甲事件における説示と同様である。

したがって、乙事件について原告らの請求はすべて理由がないに帰着する。

(結論)

よって、甲事件原告、乙事件原告らの請求はいずれも理由がないので、これらをすべて棄却するものとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下司正明 裁判官 綿引穰 永渕健一)

<以下省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例